ネパール人難民認定の件 朝日新聞のインタビューを受けました

私を含めた4人の弁護団で担当したネパール人難民認定の件で、
難民ご本人とともに朝日新聞の取材を受けました。

日本初のネパール人難民認定でもあり
4月に各種メディアで報道がありましたが、
5月になってから、中日新聞と朝日新聞が
改めて丁寧な取材をしてくださいました。

5月28日の朝日新聞名古屋本社版夕刊で報道されました。
難民認定されたご夫妻の笑顔が素敵です。

ネパール難民の抱える不安や、日本での生活の様子、
ネパール大地震後の支援活動の状況なども取り上げられており、
ご本人の人柄が行間から伝わってくるような記事です。

日本の難民認定制度の問題点についても
よく目配りされたコメントが付されています。

http://www.asahi.com/articles/ASH5F5D0ZH5FOIPE01Q.html?fb_action_ids=704130553025801&fb_action_types=og.shares

記事を一部だけ引用します。
(全文をお読みになる場合は、朝日新聞ウェブサイトからお願いいたします)

ネパールでは1996年、王制への不満を背景に共産党毛沢東主義派(毛派)が武装蜂起。10年にわたり内戦が続いた。ケーシーさんは国王を支持する政党の党員で大臣秘書も務め、毛派の迫害を受けた。

2004年には自宅から拉致され、竹の棒で頭や足をたたかれたり、手の指の爪をはがされたりした。「毛派に入らないと殺す」と脅され、応じるふりをして逃走。国内を転々とした後、国外脱出を図り、難民認定制度を知らないまま観光ビザで来日し、豊川市のネパール人仲間の家に身を寄せた。

今年4月、入管から呼び出しがあり、認定を伝えられた。これまでネパール人の認定例がないだけに、「驚いてきょとんとした」とケーシーさんらは振り返る。認定後、就労資格も得て木材会社でアルバイトを始めた。健康保険にも加入。やっと「普通」の暮らしを送れるようになった。

法務省によると、昨年、ネパール人の難民申請は1293人で国籍別で最多。一方、昨年11月、「難民偽装」を指南したネパール人が名古屋入管に摘発された。「ネパール人は偽装の主要例とされがちだった。今回の認定は偏見を覆す意義ある決定」とケーシーさんの代理人・伊藤朝日太郎弁護士は指摘する。ケーシーさんも「申請する人が全員うそをついていると思ってほしくない」と言う。

夫婦別姓訴訟 ついに最高裁大法廷へ!

私も弁護団の一員である夫婦別姓訴訟が、最高裁大法廷に回付された。

最高裁への上告事件は、普通は3つある小法廷(5人の裁判官で構成)で審理されるが、
判例変更をするとき、憲法違反の判断をするときなどは、
すべての裁判官で構成する大法廷(15人)で審理しなければならない。

大法廷回付により、例外なく夫婦同氏を強制する民法の規定に対して、
最高裁による憲法判断が示されることが確実になった
(勝つか負けるかは、現段階ではわからない)。

今朝の朝刊で、どの新聞も大々的に報じている。

なお、この裁判は、夫婦別姓訴訟と名乗ってはいるが、
夫婦別姓制度の是非という政策を論じるものではない。

夫婦同氏が強制されていることで「氏の変更を強制されない権利」が侵害されていることを問うものである。

結婚により氏が変わることを喜ぶ人が多いことを、何ら否定するつもりはない。

しかし他方で、氏が変わることに苦痛や、自己喪失感や、職業上・生活上の不利益がある人が少なからずいること、
その不利益は、想像以上に深刻であること、
氏の変更を望まない人でも、結婚をする以上は、氏の変更を強いられてしまうこと、
夫婦同氏を強制する現行制度が続く限り、結婚による氏の変更に苦痛を覚える人は救済されないこと、
を問うているのだと私は考えている。

(なお、上記は私の個人的見解である。
弁護団としてまとめ上げた見解については、弁護団ホームページに上告趣意書等の書面を掲載してあるので、
ご参照いただければありがたい。)

原告たちが現実に味わってきた苦難に正面から向き合う判決となるよう、
今後も微力を尽くしたい。

弁護団ホームページ↓
http://www.asahi-net.or.jp/~dv3m-ymsk/index.html

初めての上海出張

2泊3日で上海に出張してきました。

驚いたのは、その活気と、意外と整然とした街並みでした。

行く前は、中国人は公共の場で唾を吐くとか、マナーが悪いとか、いろいろ聞かされていましたが、
少なくとも上海の地下鉄では、電車内で携帯でしゃべる人も、飲食する人もおらず、
かなりマナーは良い印象を受けました。

もっとも、田舎だと全然違うようですし、
何しろ、いたるところに公安の目が光っている監視社会だから、マナーがよいのかもしれませんが。

上海で宿泊したホテルは上海高島屋の近くで、安心して歩ける街区でした。暗くなってから近所の足裏マッサージ店に行きましたが、危なっかしい物売りや客引きに遭遇することもなく、日本とあまり変わらない歩き方でマッサージ店にたどり着きました。

魔都上海の夜とて、かなり警戒して歩いていましたがなんだか拍子抜けで
むしろ、ロンドンの夜なんかのほうが怖いのではないかと思うほどでした。
マニラやバンコクの混沌ぶりとは全く違います。

とはいえ、いいかげんなところは徹底的にいい加減。

ホテルでは、営業時間真っ最中であるにもかかわらず、ロビーで足場の解体工事が行われていました。
壁面やガラス窓の
養生もせず、特に覆いもかけずに
3階くらいの高さから平気で配管のようなものを下に投げ落としていました
(危ない!)。

地下鉄では手荷物検査がありますが、金属探知機はないので、
爆弾を人が抱えて電車に乗ったってわかりません。
それどころか、半分くらいの人は平然と手荷物検査を拒否して、中に入ってしまいます。

意外と整然、でもやっぱりいい加減。

上海の街なかには有名ブランド店が並び、商業活動の自由はあるようですが、
フェイスブックやGMAILは遮断されて使えませんでしたし、
いたるところに政府のスローガンが掲げられているのは、やはり独裁政権だなあと思わされました。

このように、先進国とは言い難いところも多々ありますが、
やはり、中国は日本人にとって行きやすく、居心地も悪くない場所だと思いました。

何と言っても3時間で行ける近い国。
デパートでは日本の食材も豊富に手に入ります。
マッサージ屋やレストランでは、日本語のできる店員さんが多く、
多くの日本人が上海に住んでいることを実感します。

まさに一衣帯水の地。
政治的な意見の対立があったとしても、
首脳会談も開かないまま日中関係を漂流させるべきではない、と改めて思いました。

委任状に公証人の認証が必要か?【日中法文化考】

弁護士は、本人からの依頼を受けて、裁判をする。

架空の依頼であってはならないので、われわれ弁護士は裁判所に「委任状」を提出して仕事をする。「訴訟代理人の権限は、書面で証明しなければならない」(民事訴訟規則23条1項)。

しかし、実は委任状に押される印鑑は、実は実印でなくてもよい。印鑑証明の添付さえ要求されない。
私の経験では、海外にいる外国人が依頼者であったとしても
「この署名は本物ですか?」と言われたことはない。

ところが、中国の弁護士に日本人を当事者とする事件を依頼したところ、
委任状の署名欄に日本の公証人の署名認証をもらってほしいと言われ、
一瞬たじろいだ。

しかしよく考えてみれば、日本の民事訴訟規則23条2項には
「前項の書面が私文書であるときは、裁判所は、公証人その他の認証の権限を有する公務員の認証を受けるべきことを
 訴訟代理人に命ずることができる。」とある。
単に裁判所が、公証人の認証を受けろともいわず、実印+印鑑証明の添付さえ要求しないという運用をしているだけの話である。


偽物の代理人が法廷に来るのでは正しい裁判などできるわけがないから、
本来であれば「訴訟委任状に三文判しかない」というのは、危険極まりない事態ともいえる。しかし、日本では弁護士に対する信頼が(今のところは)厚いから、「弁護士さんが架空の委任状を持ってくるわけがない」と思われているのだろう。

日本では、弁護士が金融業者に対して受任通知を出して取引履歴の開示を求める場合でも、
「委任状を出せ」と言われることはめったにない。
日本の法実務は、弁護士に対する性善説の上に成り立っているといえる。

これに対して、中国では、「他人を信用してはならない」というのが原則であり、
そのため、公証人の認証もない委任状なんて論外だ、ということなのだろう。

もっとも、弁護士が代理人として作る訴状などの書面にも、
依頼者本人がサインし、公証人の認証をもらってほしい言われたのには驚いた。

さすがに中国でも、代理人弁護士が作る書面にまで本人のサインは要求されないのが普通であり、本人のサインは不要との判例もあるそうだ。
しかし、裁判所によっては、未だに本人のサインを要求するところもあり、
本人のサインがあるほうが無難、だという。

これも、弁護士に対する性善説が通用するかどうかの違いであろうか?

大丈夫ですか?職場でのセクハラ・パワハラ

昨年、『部長、その恋愛はセクハラです!』(牟田和恵著・集英社新書・2013年6月)という本が出ました。セクシュアル・ハラスメントに造詣の深い、第一線の社会学者が書いた、セクシュアル・ハラスメントをする側の心理にも踏み込んだ、かゆいところに手が届くような分析が魅力的な1冊です。この本を読むと、一見職場恋愛のように見えても、実際は被害者に著しい精神的苦痛を与え、被害者の人生設計が大きく狂わされるセクシュアル・ハラスメントが起きることがあることがわかります。

職場でセクシュアル・ハラスメントが行われると、その影響は会社にも及びます。会社が対処を誤ると、被害者が会社を去ってしまうのみならず、「セクハラを是認した」、「被害者に二次被害を与えた」などとして、責任追及の対象になりかねません。

会社には、従業員に安全な環境で働いてもらい、間違ってもハラスメント被害や過労死が起きないようにすべき義務があります。しかし、会社がハラスメントに敏感になり、働きやすい職場環境を整備することは、リスク管理の上で重要であるのみならず、従業員の実力を十分に引き出し、会社を発展させるためにも必要なことです。

私たちは、よりよい労働環境を確保するための就業規則・労使協定・労働契約書などの作り方、セクハラ・パワハラ相談窓口の設け方、ハラスメント防止規則の作り方、実際に従業員から職場環境についての苦情が出た場合の対処の仕方などについてご相談に応じます。

また、労働問題や職場環境についての、従業員サイドからのご相談も受け付けます。

なぜ、刑事弁護が必要なのか?

「なぜ弁護士は悪い人を弁護するの?」とよく聞かれます。

なぜ、刑事弁護が必要なのでしょうか。

(1)無実の罪からの救済

まず、無実の罪からの救済、が必要です。いわば「悪くないから弁護する」ということです。

無実の罪ってそんなに多いの?と思われたでしょうか?実は最近、再審無罪事件が相次いでいます。殺人罪で有罪になったのに冤罪であることが分かった足利事件、布川事件、東電OL殺人事件。殺人罪で死刑判決が確定したものの、再審開始決定が出され、冤罪である疑いが非常に濃厚な名張毒ぶどう酒事件、袴田事件など。

このような事件の多くは、捜査段階で自白が強要され、無実の人が自分が罪を認める供述調書を取られています。

一度逮捕されると、長い場合は23日間逮捕・勾留が続き、その場合弁護人以外の方との面会を禁止される場合もあります。この23日の間に厳しい取り調べを受け、うその自白をしてしまう場合が少なくありません。

重大犯罪ばかりではありません。最近、痴漢冤罪事件が話題になりました。映画『それでもボクはやってない』も、痴漢冤罪事件がテーマでした。1審、2審で有罪だったのに最高裁で無罪判決が出た痴漢事件もありました。

大筋では有罪だけれども、自分のやっていない犯罪まで押し付けられる、というケースも少なくありません。

何人かで万引きをし、自分は見張りをしていただけなのに、いつの間にか万引きの首謀者の地位に祭り上げられるということもあります。街でチンピラに絡まれ、応戦したら、ふとした拍子に相手を死なせてしまった場合でも、殺人罪に問われることがあります。

万引きで見張りをしただけなのに、絡まれたから身を守るため殴り返しただけなのに、過酷な取り調べの結果、「私が万引きの計画を立てました」「私は相手が死んでもいいと思って殴りました」などという調書が作られてしまうと、大変なことになります。

大筋では罪を認めている場合でも、自分の言い分とかなりニュアンスの違う供述調書が作られ、これに基づいて裁判がされる場合も一種の「冤罪」だといえます。間違った事実関係に基づいて裁判がなされたのでは、きちんと反省して社会復帰することも難しくなりかねません。

弁護士は、身柄を拘束された容疑者(法律用語では「被疑者」といいます)のもとに面会に通い、看守の立会いなしに話をする権利があります(接見交通権といいます)。

弁護士は、被疑者に対して黙秘権があることをしっかり伝えます。(黙秘権とは、取り調べや裁判の際に言いたくないことは言わなくてもよい権利のことです。黙秘権は憲法上・刑事訴訟法上認められた権利ですので、黙秘権を行使しても法律上不利益を受けることはありません。)

警察や検察の作る供述調書は裁判で証拠となるため変な調書を作らせてはいけないこと、調書の内容が間違っていれば訂正を求める権利があること、調書に納得できなければ署名する必要はない(そもそも調書に署名する義務もない)ことなども丁寧に教示します。

取調べで言いたいことを言わせてもらえない、身柄拘束が長すぎて持たない、という被疑者と面会し、おかしな調書が作られないように励ますのも弁護士の仕事です。

勾留が不当に長くなったときは、準抗告手続などを駆使し、身柄拘束からの解放につとめます。

(2)被疑者の立ち直りのためにできる限りのことをすること

被疑者は、多くの場合、混乱の最中にいます。無実の人はもちろん、実際に罪を犯してしまった人でも、自分のやってしまったことへの後悔や、他方で開き直り、自暴自棄などの感情に振り回されています。

罪を犯してしまった以上、被害者に謝罪したり、被害弁償をしたり、自らの行動を振り返って反省すべきですが、多くの場合、被疑者は自力で謝罪や被害弁償ができません。

弁護士は、被疑者が、被害者に対して被害弁償をすることをお手伝いし、被疑者が望むのであれば、反省ややり直しにつながるようなアドバイスをすることもできます。

また、被疑者の人間関係や職場環境に問題があれば、人間関係の修復や、転職先探しのお手伝いなどの環境調整をすることもあります(たとえば薬物の自己使用で逮捕された人に対して、薬物から立ち直るための自助グループを紹介することもあります)

被害者への謝罪・被害弁償や、被疑者のやり直しを助けることも、弁護人の大事な仕事です。

(3)捜査・裁判が憲法・法律に則って行われるよう監視すること

警察・検察は犯罪を取り締まるために強大な権限を与えられています。家宅捜索や逮捕はもちろん、組織を挙げて尾行や盗聴を行うこともあります。

弁護士は、被疑者・被告人の代弁者として、このような警察・検察の権力行使が憲法と法律に則ってなされているかをチェックします。

チェックの入らない権力は、必ず腐敗し、暴走します。

弁護士は、被疑者・被告人の代弁者として活動することで、国家権力が暴走しないようチェックし、憲法と法律に則った捜査・裁判が行われるよう監視するという使命を果たしているのです。

 

大阪市長から在日米軍への勧め(再録)

 タテマエ抜きの話が流行っている。話題は橋下が米軍に勧めたという例の風俗営業である。
 橋下が利用を勧めたのは、ソープに代表される店舗型性風俗特殊営業とデリヘルに代表される無店舗型性風俗特殊営業と思われる(と言うか、これ以外あまり考えられない)。
 で、タテマエ抜きでの話である。どちらにおいても売買春がおこなわれていることは公知の事実である。風営法制定時や改正時の国会論議の議事録を訳あって全て読んだが、トルコ風呂での売春の実体とそれへの対処の苦労が議論の端々ににじみ出ていて、それはもう大変面白かった。風俗店ではないけれど、飛田や松島や信太山を擁する大阪の人、しかも元大阪府知事、現大阪市長ともあろう者が風俗店の実態を知らないはずもない。
 かたや米軍も馬鹿ではない。日本のソープやデリヘルがどういうものか、もとより承知のところである。維新の会の共同代表且つ現職の大阪市長から買春を勧められたのだから、米軍もさぞや驚いたことであろう。絶句した顔が見たかった。
 面白いのは橋下のその後の言い分けである。大要、「風営法のもとにおいて合法的に営業がおこなわれているものの利用を勧めただけだ。買春と解釈されたのなら相手方の受け取り方という文化差への配慮が足りなかった」だと。
 タテマエ論の見本みたいな話である。我が国では売春は禁止されており、勧めたのは風営法で認められた営業?そうではなかろう。タテマエで話をしないでほしい。橋下が勧めたという風営法で認められた営業のその実態は、まぎれもなく売春営業である。タテマエを抜きにすれば両者間には風俗営業の実態への共通認識が存在するのであって、絶句されたのは相手方の受け取り方という日米の文化差などではなく、公職にある者から公の席上で正面切って買春を勧められたからである。
 一方ではタテマエで話をしないという耳障りの良い言葉で攻勢的に発言をし、他方ではタテマエ論を前面に立てて縷々弁解する。我が国ではこれを「二枚舌」と呼ぶ。