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カレーシチューという学校給食と食文化(再録)

 小学校では自校調理の給食で、中学校では給食センターから運ばれてくる給食だった。どちらの時代にもカレーシチューは人気メニューであり続けた。小学校低中学年のころは、給食室の前にあるサンプルケースを午前中の休み時間に見に行くのが楽しみのひとつだった。献立表はもちろん存在したはずだが、字を読むのは苦手だった。残念ながら味は思い出せない。
 中学に入ってからカレーシチューの味が変わったという記憶は無いので、給食センターでも同じような素材と手順で作り続けられていたのだろう。変わった点があるとすれば食べ方だ。中学ではカレーシチューを先割れスプーンを使って単体で食べたり、あるいは食パンなどをカレーシチューに浸しておとなしく食べていた(のだろうと思う)。それにくらべて小学校のころははるかに前衛的だった。コッペパンの胴体に穴を穿ってカレーシチューを流し込んで上のほうから食いつくやつもいた。もちろんだらだらこぼれるのだが、些細なことに頓着しない。コッペの穴に脱脂粉乳を流し込んで食べるやつもいたくらいだ。
 それにしても、あの「カレーシチュー」というのは何だったのか。単に「カレー」と名付けてはいないのだから、作る側にしてみればカレーとは称しがたい何物かであったはずだ。では、「シチュー」とは何か。給食には「シチュー」と名付けられた別の献立もあって、どういうものかというと、クノールか何かの白いシチューに細切れの野菜を多めに入れたようなものだった。ニンジン・タマネギ・ジャガイモ・グリーンピースなんかが入っていたように思う。ただし今のインスタントものよりも油分が少なくて、もっと牛乳っぽくて美味かった。これが「シチュー」で、「カレーシチュー」は要するにこれを薄いカレー味に仕立てたものであろうか。ご飯にかけてもカレーという感じにはならないから、それゆえカレーとは表示できず、「カレーシチュー」と称したのだろうか。
 美味しかったという記憶しかないから、子どものころはそれで満足していたことは確かである。でも、カレーシチューというメニューが現在の大人の世界に存在ないのはなぜか。ミシュランに載るようなレストランに入ったことはないけれど、たぶんそういう店にはカレーシチューは存在しないだろう。ファミレスでも見たことはないし、大学生協の食堂でもない。スーパーで売っているレトルト食品にも無いし、お湯をそそいで3分間というようなインスタントものにもない。コーンクリームシチューなんていうインスタントものはあっても、カレーシチューっていうのは見たことがない。ということは、カレーシチューというのは学校給食にのみ存在する特殊な料理だったのだろうか。いったい誰がこんなものを考え出したのだろう。学校給食の体験者は人口の相当多数を占めるわけだし、ほとんど皆がカレーシチューは美味かったという記憶を持っているはずだ。だとしたら、あれから何十年も活躍しているにもかかわらず市民権を得ていないみたいでかわいそうだ。
 今から思えば、かの大人たちは子どもたちにどういう食文化を育もうとしていたのだろう。今だによくわからない。

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